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操三番叟

Ayatsuri - Sanbasou

嘉永六年(1853)二月 作詞:篠田瑳助 作曲:五代目 杵屋弥十郎


” 恵みを願ふ種蒔と ──

 ─ 謡ひ奏でて祝しける ”



歌詞

〈二上り〉

天照らす春の日影も豊かにて 指す手引く手の一さしは 昔を今に式三番  ありし姿をかり衣に 竹田が作の出立栄  とうとうたらりたらりら たらりあがり ららりどう  千代の始めの初芝居 相かはらじと〔相河原崎〕賑わしく〔う〕 

人の山なす蓬莱に 鶴の羽重ね亀の尾の 長き栄を 三ツの朝 幸ひ心に任せたり 鳴るは瀧の水 鳴るは瀧の水 なると云ふのはよい辻占よ  天津乙女の 様がもと 絶えずとうたり 絶えずとふのが誠なら  日は照るとも 濡るる〔濡れる〕身に 着つつ馴れにし羽衣の  松の十返り 百千鳥 絶えずとうたりありうどう

〈本調子〉  その恋草はちはやぶる 神のひこさの昔より  尽きぬ渚のいさご路や 落ち来る瀧の 末かけて 結ぶ妹背のよい仲同士に 天下泰平 国土安穏 今日の御祈祷なり

〈三下り〉  おおさえおさえ喜びありや 我がこの所より外へはやらじとぞ思ふ 天の岩戸を 今日ぞ開ける〔開くる〕この初舞台  千代万代も 花のお江戸の とっぱ偏に お取立て  をこがましくも御目見得に〔御目見得を〕 ほんに鵜の真似からす飛び  難波江の岸の姫松葉も繁り ここに幾年住吉の 神の恵みのあるならば  君にあふぎの御田植 逢ふとは嬉し言の葉も  浜の真砂の数々に 読むとも尽きぬ年波や

なじょの翁は仇つき者よ つい袖引いて なびかんせ  そうも千歳仲人して 水も洩らさぬ仲々は 深い縁ぢゃないかいな おもしろや 相生のまつ夜の首尾に逢ふの松 ほんに心の武隈も 岩代松や曽根の松  あがりし閨の睦言に 濡れて色増す辛崎の 松の姿の若みどり 千秋万歳万万歳 五風十雨も穏やかに 恵みを願ふ種蒔と 謡ひ奏でて祝しける


解説

これは三番叟の中では新しいもので、雛鶴三番叟ができてから百年あとの嘉永六年のものです。名前が示すように、操り人形が演じる三番叟ものです。 本来、五穀豊穣を唄うのが三番叟ですが、この三番叟ではそれを「操り人形」が演じる舞踊曲というであるところに特色があります。

したがって、本来の祈りの部分よりも人形による真似という珍しさが注目され、大変人気が出た三番叟だといわれています(最初、二上がり部分で「竹田が作の出立栄え」というのは、これが「竹田からくり人形」であることを示しています)。

意外かもしれませんが、現在残っている長唄の三番叟は舌出し三番叟をはじめとして、廓三番叟など八曲ものバリエーションが残っています。 いずれも本来の三番叟の歌詞を要所、要所に配してまとめていますが、中には廓の話など相当逸脱したものもあります。 しかし、この操り三番叟では本来の三番叟にかなり忠実に沿っています曲の中で「扇の御田植」とは、参加した早乙女に住吉明神から扇を贈るという風習があり、これと君に会いたいとをかけています。 機会があれば、踊りをご覧になられるとこの曲のイメージがよくわかるのではないかと存じます。


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